CPUの冷却装置(下)

空冷:

強制冷却

冷却ファンを使用し空気を利用して冷却する、最も一般的な方法。ヒートシンクの上に冷却ファンを載せた状態で使用され、ヒートシンクとファンモータが一体化したものが多い。

店頭で販売されているCPU製品にはサーマル・ソリューションと称して、十分な性能の強制空冷式冷却装置が付属している。特に記述がない限り市販されているパーソナルコンピュータにおいて、CPUの冷却にはこの方式が用いられる。

Pentium黎明期(i486の末期)の頃になると、クロック周波数50~100MHz、消費電力が30W前後に上り、自然冷却では放熱が間に合わず、ファンでおこした風を吹き付けて冷却する強制空冷が行われる様になった。

その特性上、どうしても高周波の風切り音が発生してしまう。これをできるだけ抑えようとメーカーは静音性も重要視したファン開発を行っているため、標準付属品以外にも様々な製品が販売されており、その中には流体力学や航空工学の成果を応用したと謳うものまで存在している。

また一般にCPUの冷却装置はケース内部にあるため、空冷を続けるためには、ケース外部との継続的な換気が必要になる。ファンなどによる換気のほか、効率を上げるために冷却装置のすぐそばに換気口を設けたり(パッシブダクト)、冷却装置が外気に直接面するようにレイアウトする例もある(BTX規格など)。

受動空冷

プロセッサの表面にヒートシンクを取り付けて放熱する方法。

水冷

空気よりも熱容量が大きい水を冷却に用いる方法。CPUに水を循環させるヘッドを接触させて、熱を水で持ち去り、外部のラジエータで放散させる。ラジエータには空冷ファンを付け、冷却能力を高めることが多い。

大型汎用機では普及している方法であるが、一般的なパソコンに用いるには構成部品が多く大がかりになりすぎ、また定期的なメンテナンスも必要であり、水漏れなどが発生すれば高価なパソコンパーツを破壊するリスクもある。

一般に空冷式より高価かつ複雑になることなどから簡便に用いる事のできるものではなかったが、冷却性能の高さに加え、ファンによる騒音を嫌って静粛性を求めるユーザーが水冷式を用いることが多い。

2009年頃からはチューブ素材などの進化によりメンテナンスフリー化が進み、水枕、ホース、ポンプ、ラジエーターなどが一体化して冷却水が封入済みで簡単に取り付けられる1万円前後の簡易型水冷クーラーのキットが自作パソコン用途向けに販売されており、2010年代以降はこれら簡易水冷型クーラーが1万円以上のハイエンド・CPUクーラー市場において一定の市場を形成するに至っている。

水枕部分を固定した後、ラジエーター部分をケースに固定すればいいためパソコンケース内のみで水冷経路が完成し、ユーザーは水冷経路を組み立てる必要もなく冷却水そのものを扱わずに済む。

ホワイトボックスパソコンメーカーの中にもBTO用パーツやハイエンドモデルとして用意するところが現れるなど、ゆっくりながらも確実に普及が進んでいる。

ガス冷

パソコンの筐体に小型のコンプレッサを組み込んで、冷蔵庫などと同様の方式で液体が気化する時の気化熱を利用した放熱を行うもの。

マニアが自作する物のほか、これを組み入れた製品を出荷しているメーカーや、パソコンショップのショップブランド品に仕込んで販売する例もある。

水冷よりもさらに高い冷却効果を得られる反面、冷却装置そのものがそれなりに大掛かりかつ高価であり、一般的なエンドユーザーの使用環境であれば空冷や簡易水冷でも必要十分であるため、一般的な方式ではない。

ガス冷却に用いられるガスは数種類あり、主に炭酸ガスが用いられる。

寒剤を用いた冷却

CPUの直上に液体窒素やドライアイスを入れる銅升等を用いて放熱する方法。

極低温を維持することでオーバークロック時の冷却効率が評されるが、結露対策に気を遣う必要がある。さらに寒剤自体も消耗品であり運用コストがかさむので、ベンチマークの試合における極端なオーバークロック時の利用が一般的であり、個人で常用することは少ない。極低温であり極端なオーバークロックを行えるところから極冷と称される。

放熱グリス

冷却装置とCPUの間は、密着させていても材料表面の微細な凹凸による隙間が生じている。そこを空気ではなく、より熱伝導率の高い物質で埋めることによって、冷却装置へ熱を伝わりやすくするもの。シート状・ダイヤモンド粒子配合・特殊液体金属のものもある。

ヒートパイプの利用

熱伝導率の高いヒートパイプを用いてチップの熱を移動させる方法。 金属よりも効率が良いために速やかに遠くまで熱が移動できるため、薄く多量のフィンや側面を用いて表面積を稼ぐ事ができ、放熱部の効率を高められる。

大きさや部品配置の点で制約の厳しいノートパソコンなどでも十分に冷却することが容易になる。また、ケース内に余裕の大きい自作機やBTO機では、これを用いて大型化したクーラーをより大型のファンを用いて冷却できるようになり、高速ファンを使ってのオーバークロック、あるいは低速ファンを用いる事での静音化が容易になる。

ペルチェ素子の利用

ペルチェ効果を利用した薄型の冷却素子。CPUに接する面から吸収した熱を、反対側の面に移動させる。素子単体では冷却装置として機能しない(単なるヒーターになってしまう)ことから、空冷や水冷の冷却装置を併用して放熱効率を向上させたり、外気より低い温度を作るために使用される。

パソコンではi486、Pentium(初代)の時代に流行したが、それ自体がかなりの電力を消費し発熱すること、冷却しすぎると結露が発生することといった使い勝手の悪さや、空冷装置の性能向上によりペルチェ素子の優位性が失われたこと等の理由で廃れ、現在はオーバークロッカー等、一部マニアで使用されるに留まる。

CPUクーラーの主な取付方法:

プッシュピン方式

インテル製CPUにてよく使われている方式で、CPUクーラーのフレームをマザーボードに予め開けられている穴に、樹脂製のリベット(プッシュピン)を押し込んで固定する方法。押し込む時にやや力やコツが必要である。リテールクーラー及び、多くのCPUクーラーにて採用されている。

バックプレート方式

マザーボードの裏側にバックプレートと言われる、金属プレート、もしくは樹脂製のプレートにネジ穴がタップされた物を取り付け、反対側からCPUクーラーのフレームをネジにて固定する方法。

前述のプッシュピン方式を採用したマザーボードに別売のバックプレートを追加することで、この取り付け方法が使える他、インテルのLGA 2011マザーボードの場合は予めマザーボードにネジ穴がつけられているため、そのまま取り付けることが可能である。

プッシュピン方式に比べると力が要らず、安定した取付が可能である。ハイエンド向けCPUクーラーや、簡易水冷式のCPUクーラーに採用されていることが多い。

リテンション方式

AMD製CPUにてよく使われている方式で、予めマザーボードに取り付けられているリテンションという部品に、CPUクーラーのツメを引っ掛けることによって固定する方式。

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